ヌヴォトンテクノロジージャパン 自動車向け新バッテリ監視チップセットの量産開始
~バッテリ情報の高精度な測定で、自動車の電動化を加速~
[自動車向け新バッテリ監視チップセットの量産開始]
【要 旨】 ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社は、当社4世代目となるバッテリ電圧、温度、パック電流を高精度に測定する、電動車バッテリ制御向け新チップセットの量産を開始します。
【本製品による効果】
- 最大25直列のバッテリセルを一つのICで管理することで、車載バッテリシステムの簡素化が可能
- 冗長測定システム[1]と双方向リング通信[2]により、ASIL-Dに準拠したより安全なバッテリマネジメントシステム(以下、BMS)の実現に貢献
- 停車時にチップセットが単独でバッテリ異常を検知し、上位マイコンを起動させる安全機能を提供
- 電圧測定と電流測定のIC間の同期(10us以下)により、バッテリの充電状態(SOC[3])と劣化状態(SOH[4])の推定を容易化
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カーボンニュートラルを目指し電動車の普及を推進する自動車メーカーには、リチウムイオンバッテリの大容量化、高集積化により電動車の航続距離を伸ばすとともに、その安全性の向上が求められています。更に、大量に生産されるバッテリを廃棄することなく循環するサステナブル社会の実現に向け、バッテリをより長く利用することが望まれます。
そのため、BMSには、バッテリの大容量化と安全性を両立することに加え、バッテリの長寿命化を実現するためにバッテリの温度や充放電時の電流などの様々なバッテリ情報を収集する技術が必要です。
当社は、各バッテリの出力電圧と温度を正確に測定する「バッテリ監視IC」に、バッテリパック電流の高精度な測定とバッテリパック内の制御を監視する「パック監視IC」を新たにラインアップし、マイコンとの通信インターフェイスとなる「通信IC」を含めた、第4世代バッテリ監視チップセットの量産を開始します。
【当社新製品の特長】
- 最大25直列のバッテリセルを一つのICで管理することで、一般的に、100から200個程度のバッテリセルを直列に接続する車載バッテリシステムの簡素化が可能
今回開発した「バッテリ監視IC」は、当社従来製品より25%増となる最大25個の直列接続されたバッテリセルを、1つのICで測定することが可能です。これにより、大容量化と高出力化に対応するBMSを、少ない部品で構成することができ、バッテリパックの小型化、軽量化に貢献します。
- 冗長測定システムと双方向リング通信により、車載機能安全規格(ISO26262)のASIL-Dに準拠したBMSの開発・設計を容易化
チップセットを構成する「バッテリ監視IC」と「パック監視IC」のバッテリ情報を測定する回路には、安全性の高い冗長測定システムを採用しています。
また、チップセットの各IC間を通信するデイジー通信は、1つの通信経路に異常が発生した場合に、他方の通信経路を使用して通信を担保する双方向リング通信に対応しています。バッテリパックのデータ通信で異常が発生した場合でも、途切れることがない双方向リング通信は、ロバスト性(堅牢性)の高いシステムを実現します。これにより、自動車メーカーやバッテリパックメーカーは、ISO26262 ASIL-Dに準拠した車載バッテリシステムを容易に開発、設計できるようになります。
- 車両の駐停車時に、チップセットが単独でバッテリ異常を監視し、異常発生時にシステムを起動させる安全機能を搭載
当社の第4世代バッテリ監視チップセットは、スタンドアローン動作によりバッテリ状態を監視できるため、BMSのマイコンをスリープ状態にした低消費モードに移行することが可能です。低消費モード時にバッテリの温度や電圧などの異常が発生した場合には、デイジー通信を経由してマイコンを再起動し、BMSを動作させることができます。この機能により、車両が駐停車する際や輸送や保管時においても、バッテリから消費されるシステム電力を最小限に抑えながら、バッテリの異常を監視する事が可能となり、電動車のあらゆる利用シーンにおいてより安全なシステムを実現します。
- 電圧と電流の同期測定(10us以下)の実現により、バッテリセルの電力と内部インピーダンスの算出精度を高め、BMSの充電状態と劣化状態を高精度に推定
新チップセットには、バッテリセル電圧とバッテリパック電流を自動で同期して(10us以下)測定する機能を持っており、BMSが行うバッテリの電力やバッテリ内部インピーダンスの算出精度を高め、充電状態や劣化状態のより高精度な推定が可能になります。
【用 途】 電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HEV)、大容量蓄電システム(ESS)など
【対象品番】 第4世代自動車向けバッテリ監視チップセット
KA84950UA、KA84930UA、KA84917UA、KA84922UA
【仕 様】
バッテリ監視IC
品 番 |
KA84950UA |
KA84930UA |
最大接続セル数 |
25セル |
20セル |
定格電圧 |
132V |
|
電圧測定精度 |
+/- 1.5mV |
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通信I/F |
SPI/デイジー |
|
最大デバイス接続数 |
55個 |
|
パッケージ |
QFP-100pin(14mm x 14mm) |
パック監視IC
品 番 |
KA84917UA |
定格電圧 |
6V |
電流測定精度 |
+/- 0.3% |
通信I/F |
SPI/デイジー |
汎用ADC入力端子数 |
12個 |
パッケージ |
QFP-48pin(7mm x 7mm) |
通信IC
品 番 |
KA84922UA |
定格電圧 |
6V |
通信速度(SPI) |
4Mbps |
通信I/F |
SPI/デイジー(各2系統搭載) |
パッケージ |
SOP-24pin(4.4mm x 7.8mm) |
【量産開始】 2023年9月
【お問い合せ先】 ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社
(報道内容) コーポレート戦略室 PR・コミュニケーション課
(技術内容) バッテリ・アナログソリューションビジネスグループ マーケティング部
ディレクター 金久保(NTCJ_mkt_Battery_Analog@nuvoton.com)
【用語説明】
[1]冗長測定システム:
入力端子から測定を2系統化し、確実に電池パラメータを測定できるシステム
[2]双方向リング通信:
一方の経路に異常が発生した場合に代替の通信経路を確保している通信方式
[3] SOC(State of Charge):
電池残量を電池の満充電容量に対する比率で表したもの。
[4] SOH(State of Health):
電池の劣化度を示す指標。容量劣化(SOHC)、出力劣化(SOHR)を表すものがある。
【ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社 について】
ヌヴォトン テクノロジージャパン株式会社(Nuvoton Technology Corporation Japan)は、2020年にNuvoton Groupに加わりました。NTCJは、世界的な半導体専門メーカーとして、設立以来60年超にわたって培われてきた技術とさまざまな製品、およびそれらを最適に組み合わせた空間センシングソリューションと電池応用ソリューションを提供しています。 お客様やパートナーとの関係を大切にし、期待以上の付加価値を提供することで、社会、産業、人々の生活のさまざまな問題を解決するグローバルソリューション企業として活動しています。 詳細については、https://www.nuvoton.co.jp/ をご参照ください。